2013年12月25日水曜日

LOVIN'YOU

この世界には二人しかいないかのような熱い接吻を交わした
卵ととくだったが…。

「もう行かなくちゃ…」
とくは、卵の手をほどく。
「いや…ここに居てよ…」
とくは、卵のつるつるした殻をそっと触る。
「ごめん。今日は無理なんだ」
卵は、とくが浮気をしているのではと疑いはじめていた。


にわとりと…。


「あの人の所、行くの?」
卵は、悲しくて冷静でいられない。もうコロコロと転がってしまそうになりながらとくを見つめた。
「あの人?」
とくはちらっと時計を見た。
「何よ!時間なんか気にして…この際だからはっきり聞くけど…私とにわとりのどっちを選ぶのよ!」
とくは、うんざりした顔で
「またその話?」
と言った。まいったな。この話になると長いんだよな。
「そうよ!その話よ!!私とにわとり、どっちが一番なの?!」
「卵…そんな興奮しないで…」
とくはなんとかこの場を切り抜けねばと知恵をしぼった。
「とくと出会ったの…私が先なのに!にわとりはずるいわ!」
このままでは卵が興奮で温泉卵になってしまいそうだ…
「そんなどっちが先とかないから…」

「私が先よ!」
ドアを蹴破ってにわとりが卵の部屋に乱入してきた。
「てめえ。な〜に、人んち勝手に入ってきてんだよ!」
卵がずいっとにわとりの前に身を乗り出した。
「とくと出会ったの。私が先なのよ!あんだみたいなガキは遊ばれてんだ。コケーー!」
にわとりも負けていない
「ふ、二人とも、落ち着いて…。ご近所さんびっくりしちゃうから…」
とくが間に入ると卵とにわとりは声を合わせて
「卵が先?にわとりが先?どっちなのよ!」
と、とくに責めよった。
とくは、このままでは命があぶないとその場から逃げ去った。

卵が先か…にわとりが先か…


そんなの忘れたよ!


どうでもいいのに順番なんか…女ってどうでもいいこと気にするよな…



気がつくと荒川の土手にたどりついていた。
少し、先に見た事のある人物が座っていたので声をかけた。

「アインシュタインさん!こんにちは!」
「あ、どうも〜」

とくは、アインシュタインの隣に座った。

「はー。女ってわかんねっす」
「なるほどね〜。でも、喧嘩大丈夫かしら?私もついていきますから戻りましょう」
とくは、気乗りしなかったがアインシュタインさんがいるならいいかな?と思い
二人で卵のマンションに戻った。

にわとりが蹴破ったドアの向こうで二人は死闘を繰り広げたのであろう。
卵もにわとりもバラバラのぐちゃぐちゃになっていた。

とくは、ショックで震えた。
俺は…なんてことを…

アインシュタインは、二人の亡骸をそっと拾いフライパンの上にのせた。
そして、じゅーじゅーと焼き出した。

そして、ご飯を持った丼に盛りとくの前に差出した。



「この場合、親子丼といいますかね?」