2013年12月9日月曜日

セブンイレブンにて☆

「もういや!」
泣きながら、アメリカンドッグ(サクサク)はロッカールームに駆け込んだ。
後を追う店長。
「どうした?」
と泣きじゃくるアメリカンドッグ(サクサク)の肩に手を乗せた。
「なんでよ!私だけじゃなんでダメなのよ!」
お昼時のセブンイレブンである。
アメリカンドッグにへそを曲げられては店の売り上げはガタ落ちだ。
「だ、だいじょうぶですか?」
店から心配そうに声をかけるアメリカンドッグ(ふわふわ)
その声を聞いて、キッと睨むアメリカンドッグ(サクサク)。
「てめえ…ちょっとばかり指名が多いからって調子こいてんじゃねえぞ!」
と、アメリカンドッグ(ふわふわ)に灰皿を投げつけた。
「い、痛い!」
慌てる店長。
「おい!大丈夫か!体が凹んでるじゃないかっ」
「だ、大丈夫です。私、ふわふわの衣ですので時間が経てば元に戻りますから…」
店長は、アメリカンドッグ(サクサク)の頬をビンタした。
「いいかげんにしろ!頭冷やせ。どっちも店にとっては大事な商品なんだ…。今日は帰っていいから…さ、アメリカンドッグ(ふわふわ)行くぞ。お客さんが待ってる」

その日の夜、店長はアメリカンドッグ(ふわふわ)のマンションのベッドルームでタバコをふかしていた。
「今日は、まいったよな。あいつもそろそろおはらい箱かな」
アメリカンドッグ(ふわふわ)は、はだけたネグリジェを整えながら
「そんな…今の店を盛り上げてくれたのは姉さんのお陰なのよ…私ならなんともないから。お願い、姉さんを首にしないで」
と店長に切願した。
「お前は本当にいい子だな。わかったよ。お前に免じて許してやる。もうこんな時間か。家帰らないと…シャワー浴びてくるよ」

店長がお風呂場でシャワーをひねる音を確認するとアメリカンドッグ(ふわふわ)はタバコに火をつけ、深く煙りを吐いた。
私だって、そのうち姉さんみたくなるんだわ…
そして、店には若い子がやってくる。
ガラスケースに並べられて、皆に体をジロジロ見られるなんてそんな仕事いつまでも出来っこない。
姉さんみたくなりたくない!

アメリカンドッグ(ふわふわ)は、きゅっとタバコを灰皿に押しつけた。
そして、ベッドサイドテーブルの小さい引き出しを開けた。

そこには、パスポートとアメリカ行きのチケットが入っていた。