「くそだるい。マジでくそ」と少女は森で悪態をついた。
くっそー、重すぎなんだよ。
この斧は。
もうマジで無理だから。
と担いでいた斧を道に乱暴に降ろす。
そして、スカートのポケットから携帯電話をとりだした。
シュッシュッとスマートフォンを巧みにあやつり写真モードにし、
携帯電話に映る自分を見ながら前髪をなおしてから自分の姿を写真に撮った。
それから、斧が包まれている風呂敷をグッと引っ張りむき出しになった金色の斧の写真も撮り、その写真をtwitterのアプリを起動させ森の中で発言を更新した。
『疲れたよー><』
少女はそのまま適当な切り株に座り込みtwitterでの自分の発言に対する反応を待った。
少女は、あまりに集中していたためにのんが近づくのに気がつかなかった。
のんは、森のはじっこからするりするりと木の枝をつたってやってきた。
そして、少女の首元にぺとりと張り付いた。
『今日の斧、金だよー><』
少女は、自分の発言を発信するのに夢中でのんが自分の首元に張り付いて血を吸っているのにまったく気づくことが出来なかった。
もしかしたら、気がついていたかもしれないが、血を吸われても自分自身を世界中に発信しなくてはならなかった。
斧運びのバイトをもう1年もしているけど金の斧なんて初めて見たのだ。
ちゅうちゅう
のんは少女の血をどんどん吸った。
少女が興奮すればするほど、血が滑らかになりいい喉ごしだ。
のんの体は柔らかく見る見るうちに膨れていった。
いい喉ごしだ。とは思うんだけどさ。
君、アスパラガス食べただろ。
ちゃんと、皮を削がずに。
たまにあの、三角の固い部分が喉にあたる気がする。
皆さん、私のことを蛭だと思っていませんか?
違うんだな~。
私は夜です。
たくさん血を吸い終わったのんは、少女の首から離れた。
そして、ふわふわと空に浮いた。
少女が、携帯電話から目を離すと
あたりは真っ暗闇だった。
もう道もわからない。
どうしよう、もう夜になっちゃった。
風が森の木を揺らし、遠くでオオカミの鳴き声が聞こえる。
どっちへ進んでいいかわからない。
なんにも見えない。
携帯電話を頼りにしようと思っても、長い時間眺めていたので風前の灯火だ。
どうしよう。
このまま死んじゃうのかな
少女は涙を浮かべて空を見あげた。すると空から
「げえっ」
とげっぷが聞こえた。
のんがアスパラガスの三角の部分を吐き出したのだ。
アスパラガスの三角の部分はそのまま空に浮かび三日月となって輝いた。