冷たい夜風で薄皮が凍り引きちぎれそうだった。
でも大丈夫。俺の薄皮は冷たさで張り裂けたことは一度もない。
俺は、熱い熱い湯でしか爆発しない。
そう。俺はトップ オブ ウインナー。
明日は、薄皮をパリっと破れるくらいライブハウスを沸き立たせてやる。
もう、生ゆでのライブなんかしたくないんだ。
見とけ!俺たちウインナーの真の実力を!
シャウエッセンは、アパートのドアを開けた。
大学に入学してから、ずっと住み続けているボロアパートだ。
フロトイレが別になっているのと
収納スペースが異常に多いので気にいっている。
でも、そろそろ新しい部屋に引っ越したい。
早く、音楽で生活していけるようにならなければ。
「おかえり」
部屋の中でトマトがにっこりと微笑む。
「来てたのか」
「うん。お腹すいたでしょ。山菜の炊き込みごはん作ったんだよ」
トマトはこたつからそろそろと出て台所へ向った。
シャウエッセンとトマトは1年前からつきあっており半同棲生活をしている。
トマトは、甲斐甲斐しく手料理を作ってくれる自慢の彼女だ。
いつも、相談に乗ってくれ励ましてくれるのもトマトだ。
「明日のライブ、観にいってもいい?」
「もちろん」
「ファンのコが嫌な思いしないように隅っこでみてるから」
「うん。まあ、別に、いいけど」
シャウエッセンは、お椀に盛られた炊き込みご飯を口に入れた。
トマトは、うつむき加減でパジャマ裾をいじっている。
最近、トマトはおどおどとして元気がないように思えた。
まあ、冬だしな。どうせ、夏になったら元気になるだろ。
シャウエッセンは、気にせずに食事を続けた。