2014年8月7日木曜日

幽霊会議①

久美子は5年の修行を終えた。

あとは、タカシに復讐するだけだ。

天上界ハンズで購入したおばけのコスプレを着て、夜道で待ち伏せだ。
おばけのコスプレは、クオリティによって値段が違った。
お金が無いので安いのを購入したが暗いからあまり気がつかれないはずだ。

白装束に着替え、まだ夕暮れの虎ノ門ヒルズ上空をふわふわと浮いていると
知り合いのお姉さんが新橋方面からふわ〜とやってきた。

「あれ。あんた久しぶり。何その格好?」
お姉さんは、いぶかしそうな声を出した。
「彼氏を怖がらせてやろうと思い、怖がられそうな態度、声を学べるセミナーに通ってました」
「へえ」
お姉さんは何となく機嫌が良くなさそうだ。
「えっと…。生前つきあっていた彼氏が、私がこっちきたら三ヶ月で新しい彼女作ったんですよ。呪ってやろうと思いまして…」
「あんた。そんなことしてどうすんのさ」
「え。でもセミナーも5年もいったし…幽霊ってそういうものではないのですか?」
お姉さんは前髪をかきあげながら、ため息をついた。
「あんたみたいのが、いるからいつまでも私たちは『怖い』って言われるんだよ…それに新しい女作られたくらいで呪うとか、マジ、メンタル弱すぎるんだよ」
久美子はショックを受けた。
こっちの世界の人は、大抵、自分のように幽霊塾に通い卒業したら実地に出るのが通常だと思っていた。
恨みがないものは、お花畑でお釈迦様とジェンカをする。
「そんな…。だって…タカシ…あんなに泣いてたのに…しかも、私の親友と…」
久美子の目から涙が溢れた。
呪うなんてバカバカしいと自分でも薄々感じていたのだ。
でも、タカシが自分を忘れてしまっているのではと不安だったのだ。
「私、呪うのやめます!」
久美子は勢いよく白装束の帯を引っ張った。
「そうそう。そんな服あんたに似合わないよ!ほらこれ食べな」
お姉さんは、久美子におにぎりを渡した。

「美味しい!」
「でしょ?私、おにぎり屋さん始めるつもりよ。あんたも手伝いな!」