2014年11月26日水曜日

バンドやろうぜ!① 〜ウインナー篇〜

「ちょっと。ストップ!」
シャウエッセンは叫び、演奏を止めさせた。

明日はライブだ。
最後のバンド練習をするためにスタジオに集まるウインナー達。
シャウエッセンはギターの音色に違和感を感じた。

「森の薫り、おまえ練習してんのか?」
シャウエッセンは、ギターの森の薫りに詰め寄る。
「し、してるよ」
森の薫りは、シャウエッセンの顔を見ようとしない。
「全然、出来てねえじゃねえか。ギターソロ全然美味くねえ。そんなじゃ誰も俺たちを食べてくれねえよ!もっとジューシーに肉汁あふれる演奏しろよ!」
シャウエッセンは、怒りで茹でウインナーになりかけている。
ベースのアルトバイエルンとドラムの味わい造りが息を飲んで見守る。
「俺…」
森に薫りの目に涙が浮かぶ。
「俺…ギター嫌だ。ヴォーカルやらせてくれ!」
「またその話しか。それはダメだ」
即答するシャウエッセン。
「なんでだよ!お前ばっかずるいぞ!お前ばっか目立ってよお。結局俺たちががんばったってスーパーの店頭に並ぶのはお前だけじゃないか!」
「お前だって結構並んでるだろ!」
「ふざけんなよ…俺、森の薫りはいつも二番目だ。お前と比べられて、値段下げられて
2つセットで売られてる身になってみろ!!」
森の薫りは、泣き叫びながらシャウエッセンに殴り掛かった。
「喧嘩するなよ!」
ドラムの味わい造りが二人の間に入る。
「るせえ!離せ!」
「ギターを弾けっ!」
二人の喧嘩は収まらない。すると、それまで黙っていたベースのアルトバイエルンが
「皆、いい加減にしろ!」
と震えながら叫び、背負っていたジャズベースをそっと床に置いた。
アルトバイエルンが大きな声を出すことは珍しいので、三人ともハッとして喧嘩を止めた。
「いい加減にしろぃ…喧嘩する暇あったら練習しろ…明日の対バン誰か知ってんのかよ?
ハムだぞ!俺たちぜってえハムなんかに負けねえってやってきたけど最近、あいつら人気出て来てるの知ってるよな?聞いた話だと、ハム…あいつら今度のCDでチーズさんとフューチャリングするらしいぜ」
話しを聞いていた三人の顔色が青くなった。
「嘘だろ!チーズさん、俺たちとのコラボは断ったのに!」
「マジか…やべえ」
「客を取られるな」

「俺たちに、出来るのは熱い演奏だけだろ? 森の薫り、お前の気持ちはわかる。でもお客はシャウの甘い声聞きてぇんだよ。だけどな。お前のギターじゃなきゃそれも引き立たねえ。俺たちは、単品でも十分イケる。てことは4種類集まれば無敵だ!」

スタジオ中にウインナー達の熱気が集まりよりスモークされた。